青空文庫

「沼夫人」の感想

沼夫人

ぬまふじん

鏡花126
下宿生活孤絶怪奇静謐鬱屈

書き出し

一「ああ、奥さん、」と言った自分の声に、ふと目が覚めると……室内は真暗で黒白が分らぬ。寝てから大分の時が経ったらしくもあるし、つい今しがた現々したかとも思われる。その現々たるや、意味のごとく曖昧で、虚気としていたのか、ぼうとなっていたのか、それともちょいと寝たのか、我ながら覚束ないが、「ああ、奥さん、」と返事をした声は、確に耳に入って、判然聞こえて、はッと一ツ胸を突かれて、身体のどっかが、がっくり

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