青空文庫

「貝の穴に河童の居る事」の感想

貝の穴に河童の居る事

かいのあなにかっぱのいること

初出:「古東多万 第一年第一號」やぼんな書房、1931(昭和6)年9月

鏡花51
下町風土季節の移ろい怪奇寂寥幽玄

書き出し

雨を含んだ風がさっと吹いて、磯の香が満ちている——今日は二時頃から、ずッぷりと、一降り降ったあとだから、この雲の累った空合では、季節で蒸暑かりそうな処を、身に沁みるほどに薄寒い。……木の葉をこぼれる雫も冷い。……糠雨がまだ降っていようも知れぬ。時々ぽつりと来るのは——樹立は暗いほどだけれど、その雫ばかりではなさそうで、鎮守の明神の石段は、わくら葉の散ったのが、一つ一つ皆蟹になりそうに見えるまで、濡

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