こおりばな
書き出し
三畳足らずの板敷の部屋で、どうかすると息も窒がりさうになるのであつた。雨が降ると、隙間の多い硝子窓からしぶきが吹込むので、却つて落着かず、よく街を出歩いた。「僕をいれてくれる屋根はどこにもない、雨は容赦なく僕の眼にしみるのだ」——以前読んだ書物の言葉が今はそのまま彼の身についてゐるのだつた。有楽町駅のコンクリートの上に寝そべつてゐる女を見かけたことがある。乳飲児を抱へて、筵も何もない処で臆びれもせ…
写真
天馬
女の一生
0c2892c2e65fさんの感想
淡々とした調子で綴られた戦後風景、それも原爆投下後の日常を、である。新びいどろ学士に仮託しての語りが哀しい。