青空文庫

「小壺狩」の感想

小壺狩

こつぼがり

薄田泣菫25
旅の情景歴史的人物の描写静謐叙情的懐古

書き出し

--一彦山村から槻の木へ抜ける薬師峠の山路に沿うて、古ぼけた一軒茶屋が立つてゐます。その店さきに腰を下ろして休んでゐるのは、松井佐渡守の仲間喜平でした。松井佐渡守といふのは、当国小倉の城主細川忠興の老臣として聞えた人でした。晴れた初夏の昼過ぎて、新鮮な若葉の山は、明るい日光をうけて陽気に笑つてゐました。先刻から軒さきに突つ立つた高い木の枝にとまつて、鈴を振るやうな美い声で、ちんからころりと鳴いてゐ

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