青空文庫

「樹木とその葉」の感想

樹木とその葉

じゅもくとそのは

35 火山をめぐる温泉

35 かざんをめぐるおんせん

季節の移ろい旅の情景自然と人間の冥通静謐叙情的懐古

書き出し

信州白骨温泉は乘鞍嶽北側の中腹、海拔五千尺ほどの處に在る。温泉宿が四軒、蕎麥屋が二軒、荒物屋が一軒、合せて七軒だけでその山上の一部落をなしてをるのである。郵便物はその麓に當る島々村から八里の山路を登つて一日がかりで運ばるゝのである。急峻な山の傾斜の中どころに位置して、四邊をば深い森が圍んでゐる。溪川の烈しい音は聞えるが、姿は見えない。胃腸病によく利くといふので友だちに勸められ、私は其處に一月近く滯

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