青空文庫

「古狢」の感想

古狢

ふるむじな

鏡花60
下町風土郷愁都市の異化叙情的懐古静謐

書き出し

「しゃッ、しゃッ、しゃあっ!……」寄席のいらっしゃいのように聞こえるが、これは、いざいざ、いでや、というほどの勢いの掛声と思えば可い。「しゃあっ!八貫—ウん、八貫、八貫、八貫と十ウ、九貫か、九貫と十ウだ、……十貫!」目の下およそ八寸ばかり、濡色の鯛を一枚、しるし半纏という処を、めくら縞の筒袖を両方大肌脱ぎ、毛だらけの胸へ、釣身に取って、尾を空に、向顱巻の結びめと一所に、ゆらゆらと刎ねさせながら、掛

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