青空文庫

「大菩薩峠」の感想

大菩薩峠

だいぼさつとうげ

21 無明の巻

21 むみょうのまき

中里介山404
喪失と記憶孤絶歴史的人物の描写回顧的幽玄静謐

書き出し

一温かい酒、温かい飯、温かい女の情味も畢竟、夢でありました。その翌日の晩、蛇滝の参籠堂に、再びはかない夢を結びかけていた時に、今宵は昨夜とちがってしとしとと雨です。机竜之助は、軒をめぐる雨滴の音を枕に聞いて、寂しいうちにうっとりとしていますと、頭上遥かに人のさわぐ声が起りました。しとしとと降りしきる雨をおかして、十一丁目からいくらかの人が、この谷へ向って下りてくることが確かです。見上げるところの九

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