青空文庫

「永遠のみどり」の感想

永遠のみどり

えいえんのみどり

民喜31
下宿生活孤絶死の受容貧困憂鬱静謐

書き出し

梢をふり仰ぐと、嫩葉のふくらみに優しいものがチラつくようだった。樹木が、春さきの樹木の姿が、彼をかすかに慰めていた。吉祥寺の下宿へ移ってからは、人は稀れにしか訪ねて来なかった。彼は一週間も十日も殆ど人間と会話をする機会がなかった。外に出て、煙草を買うとき、「タバコを下さい」という。喫茶店に入って、「コーヒー」と註文する。日に言語を発するのは、二ことか三ことであった。だが、そのかわり、声にならない無

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