青空文庫

「天狗」の感想

天狗

てんぐ

初出:「みつこし」1942(昭和17)年9月1日

太宰10
回顧的文壇交友芸術論分析的懐古軽妙

書き出し

暑い時に、ふいと思い出すのは猿簑の中にある「夏の月」である。市中は物のにほひや夏の月凡兆いい句である。感覚の表現が正確である。私は漁師まちを思い出す。人によっては、神田神保町あたりを思い浮べたり、あるいは八丁堀の夜店などを思い出したり、それは、さまざまであろうが、何を思い浮べたってよい。自分の過去の或る夏の一夜が、ありありとよみがえって来るから不思議である。猿簑は、凡兆のひとり舞台だなんていう人さ

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