東京八景
とうきょうはっけい
(苦難の或人に贈る)
(くなんのあるひとにおくる)
初出:「文学界」1941(昭和16)年1月号
書き出し
伊豆の南、温泉が湧き出ているというだけで、他には何一つとるところの無い、つまらぬ山村である。戸数三十という感じである。こんなところは、宿泊料も安いであろうという、理由だけで、私はその索寞たる山村を選んだ。昭和十五年、七月三日の事である。その頃は、私にも、少しお金の余裕があったのである。けれども、それから先の事は、やはり真暗であった。小説が少しも書けなくなる事だってあるかも知れない。二箇月間、小説が…
5280b58d2339さんの感想
太宰の苦悩や葛藤が惜しげもなく現れていてこれぞ私小説だと思う。短い小説だが太宰の心の軌跡が知れる。最後が少し上向きになるのも良いと思う。
870383b32e6aさんの感想
狂乱の前半生を生き延びて、ひとときの安息の時季を得た作者がこれまでを東京で住んだ場所に重ねて振り返った訳だ。
6ba08142922fさんの感想
10代の頃に何十回と読んだ、太宰の作品の中でも1、2を争うくらい好きな作品。今改めて読んでも、凄い半生ですね。読者に語りかける手法も、作品にぐいぐい引き込まれていきます。
9273a3ff13c5さんの感想
読み出すと、夢中になって読んだ10代の頃にすぐに戻ってしまう。暗く哀しいトンネル。太宰さん!わかる!! 理解ってなど、いないくせに。。それでも、この時期の太宰さんの作品には救いがある。トンネルは抜けられる。ふ~ と 肩の力も、心の力も抜ける。この読了後の、この、感じが好き。幾つになっても好きです。太宰さん❕
イリュージョン亭チェリスさんの感想
「芸術が私を欺いたのか。私が芸術を欺いたのか。結論。芸術は、私である。」私、の体験と共に記憶される、景色、の記録。