きのこのかおり
書き出し
私は今上醍醐の山坊で、非時の饗応をうけてゐる。坊は谿間の崖に臨むで建てかけた新建で、崖の中程からによつきりと起きあがつて、欄干の前でぱつと両手を拡げたやうな楓の古木がある。こんもりとした其の枝を通して、段々下りの谿底に、蹲踞むだやうな寺の建物が見え、其の屋根を見渡しに、ずつと向うの山根に小ぽけな田舎家が零れたやうに散ばつてゐて、那様土地にも人が住むでゐるのかと思はしめる。吸物の蓋を取ると走りの松蕈…
山想う心
牛をつないだ椿の木
季節の植物帳