青空文庫

「姨捨」の感想

姨捨

おばすて

初出:「文藝春秋」1940(昭和15)年7月号

辰雄28
古典の翻案喪失と記憶孤絶文学不信叙情的回顧的寂寥

書き出し

わが心なぐさめかねつさらしなやをばすて山にてる月をみてよみ人しらず一上総の守だった父に伴なわれて、姉や継母などと一しょに東に下っていた少女が、京に帰って来たのは、まだ十三の秋だった。京には、昔気質の母が、三条の宮の西にある、父の古い屋形に、五年の間、ひとりで留守をしていた。そこは京の中とは思えない位、深い木立に囲まれた、昼でもなんとなく薄暗いような処だった。夜になると、毎晩、木菟などが無気味に啼い

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