青空文庫

「火の子供」の感想

火の子供

ひのこども

民喜28
喪失と記憶孤絶歴史的背景死の受容回顧的寂寥憂鬱

書き出し

〈一九四九年神田〉僕は通りがかりに映画館の前の行列を眺めてゐた。水色の清楚なオーバーを着たお嬢さんの後姿が何気なく僕の眼にとまつた。時間を待つてゐる人間の姿といふものは、どうしても侘しいものが附纏ふやうだが、そのお嬢さんの肩のあたりにも何か孤独の光線がふるへてゐた。たつた一人で、これから始る映画を見たところで、どれだけ心があたたまるといふのだらう。幸福さうな、しかし気の毒げな、お嬢さんよ。僕は何気

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