青空文庫

「艶書」の感想

艶書

えんしょ

鏡花54
奇人描写孤絶怪奇叙情的緊張

書き出し

一「あゝもし、一寸。」「は、私……でございますか。」電車を赤十字病院下で下りて、向うへ大溝について、岬なりに路を畝つて、あれから病院へ行くのに坂がある。あの坂の上り口の所で、上から來た男が、上つて行く中年増の媚かしいのと行違つて、上と下へ五六歩離れた所で、男が聲を掛けると、其の媚かしいのは直ぐに聞取つて、嬌娜に振返つた。兩方の間には、袖を結んで絡ひつくやうに、ほんのりと得《

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