けいかく
書き出し
「昨日大川君から來たうちから、例のものを送つてやつて下さい。」亨一は何の氣なしに女に云つた。疊に頬杖して、謄寫版の小册子に讀み入つて居たすず子は、顔をあげて男の方を見た。云ひかけられた時詞の意味がすぐに了解しにくかつた。「靜岡へですよ。」男は重ねて云つた。女はこの二度目の詞の出ないうちに、男が何を云ふのであるかを會得して居た。「さうですか」と云はうとしたが、男の詞の方が幾十秒時間か早かつたので、恰…
一の酉
清貧の書
小さき家の生活