青空文庫

「麦畑」の感想

麦畑

むぎばたけ

初出:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日

喪失と記憶民俗学自己認識静謐内省的叙情的憂鬱

書き出し

○十日程前、自分は田舎の祖母の家に居た。畑は今丁度麦の刈込みや田の草取りでなかなか忙しい。碧く、高く、晴れ晴れと、まるで空に浮いて居る雲を追って起伏して居るような山々の下に、重い愁わしげに金色の耕地が続いて居る。その中で、汗みどろに成った男や女が鎌を振い、火を燃して彼等の収穫にいそしんで居る。景色は美くしい。青玉のような果が鈴なりに成った梅の樹の何処かで、百舌鳥の雛っ子が盛に鳴き立てるのを聞きなが

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