青空文庫

「粗末な花束」の感想

粗末な花束

そまつなはなたば

初出:「新小説」1924(大正13)年10月号

下町風土孤絶都市の異化叙情的懐古静謐

書き出し

地震前、カフェイ・ライオンの向う側に、山崎の大飾窓が陰気に鏡面を閃かせていた頃のことだ。私はよく独りで銀座を散歩した。尾張町の四つ角で電車を降り、大抵の時交番の側を竹川町の停留場まで行き、そこから反対側に車道を横切って第一相互の下まで行く。天気がよく、西日が眩ゆくもない時刻だとそれからまた尾張町へ戻って電車に乗る。買物をすることなどは滅多になかった。時によると、私の小さい紫鞣の財布には、電車の切符

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