青空文庫

「大菩薩峠」の感想

大菩薩峠

だいぼさつとうげ

04 三輪の神杉の巻

04 みわのかみすぎのまき

初出:「都新聞」1915(大正4)年 4月7日~6月11日

中里介山138
下町風土恋愛観の相対化歴史的人物の描写死の受容厳粛叙情的寂寥

書き出し

一大和の国、三輪の町の大鳥居の向って右の方の、日の光を嫌って蔭をのみ選って歩いた一人の女が、それから一町ほど行って「薬屋」という看板をかけた大きな宿屋の路地口を、物に追われたように駈けこんで姿をかくします。よくはわからなかったが、年はたしか二十三から七までの間、あまり目立たないつくりで、伏目に歩みを運ぶ面には、やつれが見えて何となしに痛わしいが、それでも、すれ違ったものを一たびは振返らせる。鳥居の

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