青空文庫

「漱石の「行人」について」の感想

漱石の「行人」について

そうせきの「こうじん」について

初出:「新潮」1940(昭和15)年6月号

作家の日常文学批評自己認識分析的回顧的

書き出し

「吾輩は猫である」が明治三十八年に書かれてから、「明暗」が未完成のままのこされた大正五年まで、十二年ほどの間に漱石の文学的活動は横溢した。円熟した内面生活の全幅がこの期間に披瀝されたと思う。同時に、作品のどれもが、人生と芸術とに向う態度、テーマなどの点で一定の成熟の段階にとどまっていて、局面の変化としてあらわれる扱いかたの多様さや突っこみかたがそれぞれの相貌を示しつつ本質の飛躍はなかったということ

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