観念性と抒情性
かんねんせいとじょじょうせい
伊藤整氏『街と村』について
いとうせいし『まちとむら』について
初出:「九州帝国大学新聞」1939(昭和14)年6月20日号
宮本百合子約6分
作家の日常文学批評芸術論分析的学術的
書き出し
あるがままの姿は決して心理でもなければ諷刺でもない伊藤整氏の近著『街と村』という小説集は、おなじ街や村と云っても、作者にとってはただの街や村の姿ではなく、それぞれに幽鬼の街、幽鬼の村である。これまでの自身の中途半端な人生のくらしかたが、その街においてもその村においても、いろいろの思い出とそこに登場して来る人物すべてを作者にとって幽鬼としてしまっている。その幽鬼たちが彼という存在との接触においてかつ…
1 / 0