しゅんちゅう
初出:「新小説」1906(明治39)年11月
書き出し
一「お爺さん、お爺さん。」「はあ、私けえ。」と、一言で直ぐ応じたのも、四辺が静かで他には誰もいなかった所為であろう。そうでないと、その皺だらけな額に、顱巻を緩くしたのに、ほかほかと春の日がさして、とろりと酔ったような顔色で、長閑かに鍬を使う様子が——あのまたその下の柔な土に、しっとりと汗ばみそうな、散りこぼれたら紅の夕陽の中に、ひらひらと入って行きそうな——暖い桃の花を、燃え立つばかり揺ぶって頻に…
禰宜様宮田
義血侠血
犬と笛
3be6efe170a2さんの感想
ここで終われば人伝に聞いた不思議恋愛譚。のどかな明るさが不思議譚の妖しさを際立たせる。