青空文庫

「名娼満月」の感想

名娼満月

めいしょうまんげつ

初出:「富士」1936(昭和11)年4月15日

夢野久作54
孤絶時代劇歴史的人物の描写金銭と人間関係叙情的懐古

書き出し

人皇百十六代桃園天皇の御治世。徳川中興の名将軍吉宗公の後を受けた天下泰平の真盛り。九代家重公の宝暦の初めっ方。京都の島原で一と云われる松本楼に満月という花魁が居た。五歳の年に重病の両親の薬代に代えられた松本楼の子飼いの娘ながら、名前の通り満月をそのままの美くしさ。花ならば咲きも残らず散りも初めぬ十九の春という評判が、日本国中津々浦々までも伝わって、毎年三月の花の頃になると満月の道中姿を見るために洛

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