なんろ
初出:「太陽」1922(大正11)年1月号
書き出し
一シューッ、シューッ、……ギー。カッカッカッと揺れながら線路を換え、前の方からだんだん薄暗く構内にさしかかるにつれて、先頭の、重い機関車からは世にも朗らかなカラーンカラン、カラーンカランという、鐘の響が伝って来る。車内は、降りる支度で総立ちになっている。窓硝子に顔を近よせて外を見ると、遙か前方にチラチラと赤や緑の警燈が瞬き、黒く、夜のような地下の穹窿の下には、流れる灯に照らされて、人影が、低い歩廊…
モスクワの辻馬車
旅日記から
霧の夜に