よるのわかば
初出:「婦人朝日」1940(昭和15)年7月号
書き出し
一桃子の座席から二列ばかり先が、ちょうどその二階座席へ通じる入り口の階段になっていた。もう開演時間の迫っている今は、後から後から込んでいかにも音楽会らしい色彩の溢れたおとなしい活気の漲った混雑がそのあたりに渦巻いている。プログラムと書類入れの鞄とを膝の上に重ね、そこへ両腕をたがい違いにのせた寛いだ姿態で、桃子は目の下の賑やかな光景を、それもこれから聴こうとする音楽の添えものとしてたのしむ眼付で眺め…
金魚撩乱
虫干し
本の装釘