青空文庫

「火の唇」の感想

火の唇

ひのくちびる

民喜29
喪失と記憶歴史的人物の描写死の受容回顧的孤絶静謐

書き出し

いぶきが彼のなかを突抜けて行った。一つの物語は終ろうとしていた。世界は彼にとってまだ終ろうとしていなかった。すべてが終るところからすべては新しく始る、すべてが終るところからすべては新しく……と繰返しながら彼はいつもの時刻にいつもの路を歩いていた。女はもういなかった、手袋を外して彼のために別れの握手をとりかわした女は。……あの掌の感触は熱かったのだろうか冷やりとしていたのだろうか……彼はオーバーのポ

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