青空文庫

「途上の犯人」の感想

途上の犯人

とじょうのはんにん

初出:「犯罪科学」1930(昭和5)年11月号

浜尾四郎47
下層階級の描写探偵小説自己認識分析的緊張

書き出し

一東京駅で乗車した時から、私はその男の様子が気になり出した。思いなしではなく、確かにその男の方でもじろじろと私の方にばかり注意して居る。色の青白い、三十四、五の痩せた男である。身なりは大して賤しい方ではない。さっぱりした背広を着し、ソフトを戴いて居るのだが、帽子は乗り込むとすぐ棚の上においたようだった。外套は特に取り立てていうような物でない。私はこの男を確かにどこかで見た事がある。向こうでもこっち

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