きょうぞうのちち
書き出し
手紙恭三は夕飯後例の如く村を一周して帰って来た。帰省してから一カ月余になった。昼はもとより夜も暑いのと蚊が多いのとで、予て計画して居た勉強などは少しも出来ない。話相手になる友達は一人もなし毎日毎日単調無味な生活に苦しんで居た。仕事といえば昼寝と日に一度海に入るのと、夫々故郷へ帰って居る友達へ手紙を書くのと、こうして夕飯後に村を一周して来ることであった。彼は以上の事を殆ど毎日欠かさなかった。中にも手…
女の一生
富嶽百景
ゆく雲