青空文庫

「お時儀」の感想

お時儀

おじぎ

初出:「女性」1923(大正12)年10月

内省日常の非日常知性と感性の対立都市の異化叙情的孤絶静謐

書き出し

保吉は三十になったばかりである。その上あらゆる売文業者のように、目まぐるしい生活を営んでいる。だから「明日」は考えても「昨日」は滅多に考えない。しかし往来を歩いていたり、原稿用紙に向っていたり、電車に乗っていたりする間にふと過去の一情景を鮮かに思い浮べることがある。それは従来の経験によると、たいてい嗅覚の刺戟から聯想を生ずる結果らしい。そのまた嗅覚の刺戟なるものも都会に住んでいる悲しさには悪臭と呼

2024/05/10

067d56104a71さんの感想

我々が普段一般に感じる素朴でありふれた、それ故に特に話題にあげるまでもない出来事や感情を、美しく明朗に書き上げる芥川の技量に心打たれる。 『時たまプラットフォオムにお嬢さんの姿を見ないことがあると、何か失望に似たものを感じた。何か失望に似たものを、――それさえ痛切には感じた訣ではない。』 というフラットな関係が、たった一度のお辞儀によって僅かな変化を与え、次にお辞儀をしないという一瞬の判断によって、その後二度とお辞儀をしたり、やり取りをしたりすることは無くなったのだろうなと思わされる。そしてその後には 『ただ保吉の覚えているのは、いつか彼を襲い出した、薄明るい憂鬱ばかりである。』 と続く。 世に出回っている恋愛小説に比べると、劇的さにもかけるし、恋愛と言っていいのかと言うくらいの些細な内容だが、自分には何か言葉にできない「良さ」を感じた。芥川ならこの「良さ」も名作として昇華してしまうのだろう。

2019/11/02

19双之川喜41さんの感想

 通勤列車で よく見掛ける娘に 何気無く お辞儀を してしまう。 意志が自由でない反射的な事なので 責任を取らなくてよいと らちもないことを 思う。 保吉の動揺が 濱辺の描写と共に 描かれる。

2018/01/13

ec538f32331eさんの感想

大正時代の若者は、今から比較すると、随分純情と言うか。そのういういしさが新鮮で、印象に残った。

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