しょうちょうのいか
書き出し
或る肉体は、インキによつて充たされてゐる。傷つけても、傷つけても、常にインキを流す。二十年、インキに浸つた魂の貧困!或る魂は、自らインキにすぎぬことを誇る。自分の存在を隠蔽せんがために象徴の烏賊は、好んでインキを射出する。或る蛇は、常に毒液を蓄へてゐる。至大の恐怖に駆られると、蛇は噛みつく。致命の毒を対象に注入しながら自らまた力尽きて斃れる旱魃の河!或る蛇の技術は、自己防衛とその喪失、夏夕の花火、…