青空文庫

「未見の人」の感想

未見の人

みけんのひと

初出:「文章世界 第四巻第一号」1909(明治42)年1月15日

書き出し

或る日私は急な相談事があつて、友人末永を訪ねた。例の通り案内をも乞はず、庭木戸から聲を掛けて座敷の障子を開けると、彼れの細君や母や妹やが一所になつて、腹を抱へて笑つてゐる。私は相變らず氣樂な家庭だと、少し呆れ氣味で、「どうしたんだい。」と、座敷に突立つたまゝ、皆んなを見廻した。すると末永は一人笑ひを止め、「何でもないんさ、今武部といふ男が來てね、變な眞似をして行つたもんだから。」「武部?……聞いた

1 / 0