青空文庫

「昔の店」の感想

昔の店

むかしのみせ

初出:「若草」宝文館、1948(昭和23)年6月

民喜34

書き出し

静三が学校から帰って来た時、店の前にいた笠岡が彼の姿を認めると「恰度いい処へお帰りね、今、写真撮ろうとしている処なのよ」と云って、早速彼を自転車の脇に立たせた。その時(それは明治四十三年のことであった)出来上った写真は、店先の自転車に凭掛っている静三の姿のほかは、誰もはっきり撮れていなかった。父も兄も他の店員たちも少し引込んだ場所に並んでいたため、写真ではその辺が真暗になり、みんな輪郭がぼやけてい

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