青空文庫

「曲者」の感想

曲者

くせもの

初出:「進路」進路社、1948(昭和23)年2月号

民喜9

書き出し

☆その男が私の前に坐って何か話しているのだが、私は妙に脇腹のあたりが生温かくなって、だんだん視野が呆けてゆくのを覚える。例によって例の如く、これは相手の術策が働いているのだなと思う。私は内心非常に恥しく、まる裸にされて竦んでいる哀れな女を頭に描いていた。そのまる裸の女を前にして、彼は小気味よそうに笑っているのである。急に私は憎悪がたぎり、石のように頑なものが身裡に隠されているのを知る。しかし、眼の

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