しゅっぱんやそうまくり
初出:「文藝春秋 第二十七巻第十一号」文藝春秋新社、1949(昭和24)年11月1日
書き出し
文学書類を出版する本屋も私は明治三十四五年頃から今日まで関係してゐることだから話をしだせば限りがないくらい沢山あります。文学者の方から見れば本屋といふものは概して不愉快なものさ。口と腹とはまるでちがつてゐる人間ばかりだから心持好く話はできない。文学者は初から一枚書けばいくらだと胸算用をして金のためばかりに筆を執るわけでもないんだから本屋と金の取引をするだけでも愉快ではない。明治時代には今日のやうに…