青空文庫

「吾亦紅」の感想

吾亦紅

われもこう

初出:「高原 第三輯」鳳文書林、1947(昭和22)年3月15日

民喜21

書き出し

マルマルが私の家に居ついたのは、昭和十一年のはじめであった。死にそうな、犬が庭に迷い込んで来たから追出して下さいと妻はある寒い晩云った。死にはすまいと私はそのままにしておいた。犬は二三日枯芝の日だまりに身をすくめ人の顔をみると脅えた目つきをしていたが、そのうちに元気になった。鼻や尻尾に白いところを残し、全体が褐色の毛並をしている、この雌犬は人の顔色をうかがうことに敏感であった。その春、私たちは半月

2021/10/03

9ab58ff14556さんの感想

美しい追悼歌。死と生の狭間の中で静かに朽ちていく。愛するゆえの悲しみが彩かな煌めきを一際放つ。全編詩情を湛えている。妖しい曼珠沙華のような暗い死の陰に怯えているが憧れてもいる。。遥かな場所に向かって落ちていくが、そこはもはや安住の地では無い。今生の中に必ずある喜びを美しい言葉で綴っている事が救い。

2021/10/02

阿波のケンさん36さんの感想

原爆の後遺症に苦しみ早世した作者、それよりも早く逝った妻、貧しくとも今より自然との距離が近かった時代。感受性の強い夫婦の清くも切ない物語。

1 / 0