かぜ
初出:「文芸」1954(昭和29)年11月
書き出し
一ふたりが世の常の男女らしく動けば、ことは平凡に運んだろうに、おたがいになにかしら少し足りないものがあって、なかなかそこまでゆかなかった。つまりふたりの間には長い年月にわたって手紙のやりとりが続きながら、若い男と女の間にあってしかるべき恋文のやりとりは一度もないという、ふしぎな間がらだったのだ。しかし、はたの者にはそう見えなかったらしい。「修造の嫁は茂ちゃんぐらいでないと納まるまい。」修造の兄がだ…