青空文庫

「勲章」の感想

勲章

くんしょう

初出:「新星 第二巻第一号」新生社、1946(昭和21)年1月1日

永井荷風21

書き出し

寄席、芝居。何に限らず興行物の楽屋には舞台へ出る芸人や、舞台の裏で働いている人たちを目あてにしてそれよりもまた更に果敢い渡世をしているものが大勢出入をしている。わたくしが日頃行き馴れた浅草公園六区の曲角に立っていた彼のオペラ館の楽屋で、名も知らなければ、何処から来るともわからない丼飯屋の爺さんが、その達者であった時の最後の面影を写真にうつしてやった事があった。爺さんはその時、写真なんてエものは一度

2024/04/10

19双之川喜41さんの感想

 題名の 勲章は 勲八等(くんはっとう)瑞宝章(ずいほうしょう)と 従軍章(じゅうぐんしょう)である。荷風(かふう)は 浅草六区の 曲がり角に 在った オペラ館の 猥雑な 楽屋裏に 足繁(あししげ)く 出入りして 裸体(らたい)の 踊り子達と 共に 写真に 撮られ 数多くの 雑誌に 掲載(けいさい)されて その頃 知らない人は ほぼ いないくらいの 超有名人であった。勲章の 持ち主は 楽屋に おかもちを 持って 出入りしていた 風采(ふうさい)の あがらない 中年男で 荷風が スナップ写真を 撮ってやり 現像して 男に 手渡そうとしていた頃 楽屋に 忽然(こつぜん)と 来なくなり 消息を絶つ。暗喩(あんゆ)に充ちた 優れた 文章と 想った。   

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