こよみ
初出:「新潮」1940(昭和15)年2月
書き出し
一「実枝、年忌の手紙出しといたか」奥の部屋で出勤前の身支度をしながらのクニ子の声がせかせかと聞えた。茶の間の実枝は赤い箸でたくあんを挾み、わざとゆっくりと前歯で噛みながら、「ん」と、どっちつかずの返事をした。「ん、じゃないでほんまに、まだ出しとらんじゃろ」紫紺色の袴の後ろを引きずってもどかしい声で近づいてきた。いっしょに坐る朝食なのに実枝はいつでもあとになり、というよりクニ子の方が落ちついていずに…
f72dd25a6741さんの感想
これすごくいい話なのでみんな読んじゃいなよ。