ふゆびのまど
初出:「新生 第二巻第二号」1946(昭和21)年2月1日
書き出し
○窓の外は鄰の家の畠である。畠の彼方に、その全景が一目に眺められるやうな適当の距離に山が聳えてゐる。山の一方が低くなつて樹木の梢と人家の屋根とに其麓をかくしてゐるあたりから、湖水のやうな海が家よりも高く水平線を横たへてゐる。これが熱海の町端の或家の窓から見る風景である。九月の初からわたくしは此処に戦後の日を送つてゐる。秋は去り年も亦日に日に残少くなつて行かうとしてゐる。然しわたくしの室にはまだ火鉢…