青空文庫

「画集」の感想

画集

がしゅう

初出:落日「高原」鳳文書林、1948(昭和23)年7月号

民喜6

書き出し

落日湖のうへに、赤い秋の落日があつた。ほんとに、なごやかな一日であつたし、あんな、たつぷりした入日を見たことはないと、お前も云つた。いつまでも、あの日輪のすがたは残つた、紙の上に、心の上に、そして、お前が死んでからは、はつきりと夢の中に。故園土蔵の跡の石に囲まれた菜園、ここは一段と高く、とぼしい緑を風に晒してゐる。わたしはさまざまなことをおもひだす。薄暗い土蔵の小さな窓から仄かに見えてゐた杏の花。

1 / 0