青空文庫

「蝗の大旅行」の感想

蝗の大旅行

いなごのだいりょこう

初出:「童話」コドモ社、1921(大正10)年9月

佐藤春夫10

書き出し

僕は去年の今ごろ、台湾の方へ旅行をした。台湾というところは無論「はなはだ暑い」だが、その代り、南の方では夏中ほとんど毎日夕立があって夜分には遠い海を渡っていい風が来るので「なかなか涼しい」だ。夕立の後では、ここ以外ではめったに見られないようなくっきりと美しい虹が、空いっぱいに橋をかける。その丸い橋の下を、白鷺が群をして飛んでいる。いろいろな紅や黄色の花が方々にどっさり咲いている。眩しいように鮮やか

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