青空文庫

「純情小曲集」の感想

純情小曲集

じゅんじょうしょうきょくしゅう

01 珍らしいものをかくしてゐる人への序文

01 めずらしいものをかくしているひとへのじょぶん

初出:「純情小曲集」新潮社、1925(大正14)年8月12日

書き出し

萩原の今ゐる二階家から本郷動坂あたりの町家の屋根が見え、木立を透いて赤い色の三角形の支那風な旗が、いつも行くごとに閃めいて見えた。このごろ木立の若葉が茂り合つたので風でも吹いて樹や莖が動かないとその赤色の旗が見られなかつた。「惜しいことをしたね。」しかし萩原はわたしのこの言葉にも例によつて無關心な顏貌をした。或る朝、萩原は一帖の原稿紙をわたしに見せてくれた。いまから十三四年前に始めてわたしが萩原の

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