青空文庫

「烏帽子岳の頂上」の感想

烏帽子岳の頂上

えぼしだけのちょうじょう

初出:「早稻田文學 第二百三號」早稻田文學社、1922(大正11)年10月1日

窪田空穂19

書き出し

眼が覚めると一しょに、私はテントから這い出した。着ものは夜も昼も一つものである。着がえといえば、靴下を脱いで、甲掛足袋と草鞋とを穿くだけであった。昨日、朝から夕方まで、殆ど四つ這いになり通してこの烏帽子岳の乗越まで登った、その疲れはほぼぬけてしまっていた。寝しなには、「眠れるか知ら……」とあやぶんだが、気を落ちつかせていると、いつか寒さを忘れて眠ってしまったらしく、今は、眠りの足りたあとにだけ感じ

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