しんきちょうしゃにっき
初出:「中央公論 第二十四年第十號」1909(明治42)年10月
書き出し
十一月廿八日あゝ丁度半年目だ。月日のたつのは早い。日本に歸つてからもう半年たつた。また今日も風か。何といふ寒い風だらう。十一月悲しき十一月、冬が來ると世界中何處へ行つても寒い。亞米利加から歐羅巴、地中海から印度洋を旅して來た經驗から考へても、要するに神の作つた地球上の天候は至る處人類の生活に適して居ない事が分る。暑くもなく寒くもなく、人間をして他の動物と同じやうに青草の上に横はつて心持よく青空を眺…
4b0e03c3248fさんの感想
洋行帰りの青年の思いを小説仕立ての筋と何人かの芸術家の口吻に乗せて伝えた秀作。後の荷風の思想作風生涯に繋がる萠芽が全て出ているように思える。その意味でも重要な文章であろう。