青空文庫

「河鹿」の感想

河鹿

かじか

初出:「新潮」1927(昭和2)年9月

尾崎士郎10

書き出し

川ぞいの温泉宿の離室に泊っている緒方新樹夫妻はすっかり疲れてしまった。彼等はお互いの生活の中から吸いとるかぎりのものを吸いとってしまっていた。愛することにも、憎むことにも彼等にとっては最早何の新しさも残っていなかった。彼等は全く同じ二つの陥穽の中に陥っているようなものだった。互いに、小さな感情で反撥し合うことと、残滓にひとしい小さな愛情の破片を恵み合うこととの退屈な習慣の繰返しによって、彼等は辛う

2020/05/11

19双之川喜41さんの感想

 倦怠感を 通り越して  嫌悪感寸前にある  壊れかかった夫婦が 交尾しつつ 清流を 流れ下る河鹿を 目撃し なんとなく  神々しいものを感じる。まるで  自分たちを 投影してみせたかのような 河鹿の 描写に 並々ならぬ 巧妙さを 見た。

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