はせがわとうはくの「しょうりんずびょうぶ」
初出:「東京新聞」1964(昭和39)年11月28日
書き出し
水墨の絵から何か一つ選ばうと思案する間もなく、長谷川等伯の松林図屏風がはうふつと目の前に現はれた。上野の博物館にあるもので、いくたびかそこで見、そのたびに感動の溜息をついた絵だ。六曲一双つまり十二扇の大画面に、濃淡およそ二十本ばかりの松が、遠近・高低・幹の直立と斜め等の関係を保ちつつ、見事な調子でさらさらと描かれてゐる。煙雨がいつぱいにたてこめ、かくれて見えない松も多いらしい。逆にいふと、松の見え…