青空文庫

「『広辞苑』後記」の感想

『広辞苑』後記

『こうじえん』こうき

初出:「広辞苑」岩波書店、1955(昭和30)年5月25日初版

新村9

書き出し

昭和十年の初頭以来、粒々の辛苦を積んで完成を急ぎつつあった『改訂辞苑』の原稿も組版も、二十年四月二十九日の戦火に跡形もなく焼け失せ、茫然たる編者の手許にはただ一束の校正刷のみが残された。しかも戦火に続く敗戦と戦後の混乱とは、如何に辞典に妄執を抱く編者を以てしても、直ちに復興を企図し得べき底のものではなかった。焦土の余熱は、容易に冷ゆべくもなかったのである。然るに倖なる哉、同年十二月、当時元気に活躍

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