うごかぬおんな
初出:「国民新聞」1921(大正10)年1月7日
書き出し
私達が、小田原から、熱海行きの、軽便鉄道に乗り込んだ時も、その一行と一緒になった。その一行は、新橋から発った私達の二等車へ品川あたりから、始めて入って来た人達であった。重厚な顔付をして、堅く洋服に身を包んだ老紳士のあとに高貴な衣服の裾を捌いて四十先位いな夫人らしい女が続き、次に青いショールをした十九か二十程の令嬢、その後に令嬢の長い袖を、支える様にして腰元と見える黄色く骨立った中老女、それからは、…
阿波のケンさん36さんの感想
主人公と汽車で一緒になった紳士一家の観察記。伊豆の明るい日差しの中の印象だ。作者は自分の過去をその一家に見いだしていた様に思われる。