かやのおいたち
初出:「解放」1919(大正8)年12月号
書き出し
一「かやの顔は、眼と口ばかりだな。どうも持参金付きの嫁入でもせにあならねえかな」と云ったりしていつも茶の間の長火鉢の側に坐って、煙草管をぽかんぽかんとたたいてばかり居る癖の、いくら大笑いに笑っても、苦笑いの様な表情しか出ないこのお爺さんが、かやの本当の祖父でないことは、このお爺さんが、時々——半年に一度くらい——寒い季候には茶色のむくむくした襟巻と、同じ色のとぼけた様な(御隠居さん帽子)を冠ったり…