青空文庫

「うき草」の感想

うき草

うきくさ

芙美子23

書き出し

その村には遊んでゐる女が二人ゐた。一人はほんの少しばかり氣がふれてゐるさえといふ女で、三年ほど前、北支那へ行つてゐて、去年の夏、何の前ぶれもなくひよつこり村へかへつてきた。さえの家は炭燒きをしてゐたのだけれど、父親はもうずつと以前に亡くなり、たつた一人の兄は二度も兵隊にとられて、その二度目の戰場生活はもう三年ばかりになり、何でもビルマの方へ行つてゐるらしいといふ話であつた。——さえの家庭は母親のし

2018/08/21

いちにいさんの感想

戦争は遠くの話と思っていたが、出征者が身近に出ると、急に近くの話に思えてくる。というような事が書いてあった。死という概念も同じで、身内の葬式で初めて死の恐怖が迫ってくる。 貞操を破った娘の父が自殺をはかるというショッキングな描写が、然り気無く入っているところが戦時中だと思った。すでに、死が身近な存在なのだ。戦争が始まると、村は女ばかりになるのは古代ギリシアでも同じだ。そんななか、二人の女は跛と白痴で、弱者として登場している。弱者のはずが、駈落ちしたり未婚で孕んだりとお盛んであるところが逆に救いなのかも知れない。

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