ぜんとなお
初出:「表現 第二巻第三号」角川書店、1949(昭和24)年3月1日
書き出し
金沢イエは私の父の浄瑠璃の弟子である。短い間であったが内弟子に来ていたこともあった。私は小学校の五年生位だった。イエはそのとき十五位だったろう。あれは稚児輪というのだろう、絵に見る牛若丸のような形の髪に結っていた。またそれがよく映った。色白で眼の涼しいイエは子供の聯想で牛若丸のように私の眼に映った。イエがその日から家に来るという日、学校から帰るとすぐ私はイエの姿を求め、台所で用をしていた母に、「イ…